2週間ほど前に憲法の勉強会がありました。自民党の憲法草案と現憲法とを比較しながら、どんなところが変わってくるのかという切り口でした。第9条についてはもちろんですが、今回考えさせられたのは第12条と第13条にでてくる<公>ということについてでした。
さて第12条を見てみましょう。
<現憲法>
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。<自民党草案>
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。現憲法では『公共の福祉』とあります。また自民党草案では『公益及び公の秩序』と変わっています。この語句の変更によって私たち国民の何が変わるのでしょう?
この語句の変更は第13条でも同様で、
<現憲法>
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。<自民党草案>
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。『公共の福祉』が『公益及び公の秩序』になっています。
ここで使われている『公』ってなんなんでしょう???
まず「大辞林」では
(1)政治や行政にたずさわる組織・機関。国・政府・地方公共団体など。古くは朝廷・幕府などをさす。
(2)個人ではなく、組織あるいは広く世間一般の人にかかわっていること。
(3)事柄が外部に表れ出ること。表ざた。表むき。
(4)天皇。また、皇后や中宮。
へぇ〜『公』って天皇っていう意味もあるんだ・・・・とちょっとびっくり。もう少し調べてみると「日本語の『公』はもともと、『天皇』や『国家』をさしました」(
法学館憲法研究所のサイト)とあるのを見つけたのでした。
そのサイトにはこうもありました。「『公共の福祉』のことを英語ではpublic welfare といいますが、このpublicとは『人民』がもともとの意味です。つまり『人びと』ということです」・・・・うん、なるほど、そうだよな、ぼくのなかでも『公』っていうのは『人びと』の感覚のほうが強いな。
最近では
『国益』ということばがよく使われます。アメリカがイラク戦争を始めたとき日本はこれを支持しましたが、その根拠のひとつとして使われたのが
「日本の国益」でした。今ではイラク戦争へのアメリカ協力が日本の国益にかなっていると考える人はほとんどないと思いますが、当時は多くの日本人がだまされ?たのではないでしょうか。
また小泉純一郎が首相だったとき韓国や中国からの批判をはねのけて頑なに靖国参拝を強行し続けたとき、もちろんこれを支持した人もいたのでしょうが、多くは
「日本の国益」を損ねているとして批判していました。たしかに損ねていたと私は思います。
いや私の理解では、首相の靖国神社参拝が日本の
国益にかなうか損なうかというのはハッキリいってどうでもいいことで、首相の靖国神社参拝が憲法で禁じている政教分離の原則にてらして違反しているかいないかを厳密に問うべきであったと思うのです。それなのに
国益というひじょうに曖昧な概念が持ち出されて憲法がうやむやにされてしまいました。
気をつけなければいけないのは、
「日本の国益」とだれかが言うとき、ほとんど言ったもの勝ちもしくは大きな声で言ったもの勝ちで、はたしてほんとうにそれが
「日本の国益」かどうかということが検証されることなく使われ、あたかも善であるかのように思い込まされてしまう。
こうして考えていたときに、自民党の憲法草案で使われている
『公益及び公の秩序』というのは言い換えると
『国益』なんじゃないかと思いついたのでした。そこで、先にあげた自民党憲法草案の12条と13条の『公益及び公の秩序』という部分を『国益』と置き換えてみました。
<自民党草案改訂バージョン>
第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に国益に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、国益に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。そう、自民党が考えている憲法は、わたしたちに保障する基本的人権は「国益に反しないかぎり」与えられるものであって、もし国益に反するとみなされたときには奪われて当然であるというものに違いない。
おれはそんな憲法まっぴらごめんだ。
by customlegend at 23:36 |
政治・経済 |
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